権利関係:詐欺・強迫
契約した当事者間で、正常な意思表示のもと契約ができていれば問題はありませんが、騙されたり、脅されたりした場合はどうなるのでしょうか?
騙されてした契約「詐欺」。
AがBにだまされてBに自分の土地を売ってしまった場合、Aはその契約を取り消すことができます。しかし、Aがその契約を取り消す前に、Bがさらに土地をCに転売した場合、Cが善意(AとBの詐欺について知らないことを、知っていれば悪意)で、かつ、過失がない(落ち度がないということ)ときは、AはCから土地を返してもらうことはできません。民法は「騙したほうが悪いけれど、騙される方にも落ち度がある」と考えています。
脅されてした契約「脅迫」。
AがBにおどされてBに土地を売った場合、脅迫の被害者Aは、その契約を取り消すことができます。Bがさらに土地をCに転売した場合、AはCに、土地を返せといえるのです。民法の考えは、「強迫は詐欺より犯罪性が高く、強迫されたものを保護します」。
第三者からだまされて契約した場合。
Aが第三者Bにだまされて土地をCに売却した場合、相手方Cを保護する必要があるので、表意者Aは、相手方Cが詐欺の事実を知っている(悪意)か、または知るときにできた(有過失)のときに限り、取り消すことができます。これに対し、Aが第三者Bにおどされて土地をCに売却した場合は、脅された者を保護する必要があるので、表意者Aは、相手方Cが強迫の事実を知っているかどうかにかかわらず(善意・悪意を問わず)、取り消すことが可能なのです。